交通違反をした場合に違反者に与えられるペナルティとして、行政処分があります。
そもそも行政処分とはどのようなもので、具体的にどのような処分があるのでしょうか。
また、これに不服がある場合にはどう争えば良いのでしょうか。
本記事では行政処分についてお伝えします。
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行政処分とは
行政処分の定義
行政処分とは、行政機関の活動の中でも、行政目的を達成するために、法律の規定に沿って、国民の権利義務その他の法律的地位について具体的に決定する行為のことをいいます。
法学として行政法を学習する際に「行政行為」と呼ばれることもあります。
行政処分の目的
行政処分は、行政が達成しようとする一定の目的を実現するために行われます。
国は、その政策的な目的を実現するために法律を制定して、その法律について行政が担当することで政策的な目的を実現することになっています。
法令違反に対する行為への制裁である「刑事罰」とは異なりますので注意しましょう。
行政処分の例
交通違反に対する行政処分は典型的な例です。
道路における危険を防止して交通の安全と円滑を図り、交通に起因する障害の防止に資することを目的として、道路交通法が定められています。
その道路交通法の目的を達成するために、免許の取消しや免許の停止などの処分が行われます。
なお、運転免許を取得しようとしても、運転免許の交付を拒否もしくは保留する処分や、国際運転免許証をもっている人に対しては、運転禁止処分を下すこともあります。
行政処分の基準になる点数制度について
交通違反に対しては、上述した通り免許の取り消しや免許の停止などの処分が行われます。
どのような基準で免許の取り消しや停止が行われるのですか?
点数制度とは
交通違反をしたときにどのような処分が下されるかは、運転手が起こした交通事故・交通違反によって変わり、違反の内容で一定の違反点数を定めています。
これを加算していき、過去3年間の累積点数と行政処分の回数をもとに処分が決められます。
稀に、一定の点数から減算されるような表現がありますが、これは正確ではないことに注意をしましょう。
点数には個々の違反行為についての点数である基礎点数と、交通事故を起こした場合に付け加えられる付加点数の2つの種類があります。
基礎点数とは
個々の違反行為について定められている点数が基礎点数です。
違反行為には、一般的な違反行為である一般違反行為と、違反の内容が悪質・危険である場合の特定違反行為に分かれています。
違反点数は、危険性・悪質性の度合に応じて、一般違反行為の場合には1~25点、特定違反行為の場合には35~62点が定められています。
危険性・悪質性の高い特定違反行為は最低でも35点が定められていて、過去の処分の回数に関わらず一発で免許取消処分となるものです。
一般違反行為の代表例 | ||
速度違反 | 20km未満 | 1 |
20km以上25km未満 | 2 | |
25km以上30km未満 | 3 | |
30km以上50km未満 | 6 | |
高速道等30km以上40km未満 | 3 | |
高速道等40km以上50km未満 | 6 | |
50km以上 | 12 | |
携帯電話 | 保持 | 3 |
交通の危険 | 6 | |
指定場所一時不停止等 | 2 | |
通行禁止違反 | 2 | |
追い越し違反 | 2 | |
信号無視 | 2 | |
シートベルト装着義務違反 | 1 | |
無灯火 | 1 | |
合図不履行 | 1 | |
無免許運転 | 25 | |
共同危険行為等禁止違反(いわゆる暴走行為) | 25 |
特定違反行為 | |
救護義務違反(いわゆるひき逃げ) | 35 |
麻薬等運転 | 35 |
酒酔い運転 | 35 |
危険運転致傷 | 45〜55(被害者の治療期間等による) |
危険運転致死 | 62 |
運転障害等 | 45〜55(被害者の治療期間等による) |
運転殺人等 | 62 |
その他の交通違反の違反点数については、交通違反の点数一覧表(警視庁)を参考にしてください。
付加点数とは
交通違反によって交通事故を起こしたときには、上記の交通違反に対する基礎点数のほかに、付加点数が付け加えられます。
付加点数は、交通事故による被害の内容と、運転者の不注意によって事故がおきたかどうかによって次のように定められています。
被害の内容 | 運転手の不注意 | 違反点数 | |
死亡事故 | 違反者の不注意 | 20 | |
その他 | 13 | ||
重傷事故 | 治療期間3ヶ月以上、または後遺障害 | 違反者の不注意 | 13 |
その他 | 9 | ||
治療期間30日以上3ヶ月未満 | 違反者の不注意 | 9 | |
その他 | 6 | ||
軽傷事故 | 治療期間15日以上30日未満 | 違反者の不注意 | 6 |
その他 | 4 | ||
治療期間15日未満 | 違反者の不注意 | 3 | |
その他 | 2 | ||
建造物損壊 | 違反者の不注意 | 3 | |
その他 | 2 | ||
措置義務違反物損(いわゆる当て逃げ) | 5 |
免許停止・免許取消の点数
免許停止・免許取消の点数は、過去3年間に累積した違反点数によって次の日数になります。
過去3年間の累積点数 | 免許停止の日数 |
6〜8点 | 30日 |
9〜11点 | 60日 |
12〜14点 | 90日 |
15点~24点 | 取消1年 |
25点~34点 | 取消2年 |
35点~39点 | 取消3年 |
40点~44点 | 取消4年 |
45点以上 | 取消5年 |
2度目以降は、免許停止になる点数が下がる・停止日数が上がるなど、免許停止・免許取消の回数によって次のように変わります。
点数\前歴 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回以上 |
2点 | – | 90日 | 120日 | 150日 |
3点 | – | 120日 | 150日 | 180日 |
4点 | 60日 | 150日 | 取消1年 | 取消1年 |
5点 | 60日 | 取消1年 | 取消1年 | 取消1年 |
5点以上の場合の詳細は、行政処分基準点数(警視庁)を確認してください。
無事故・無違反の運転者に対する特例
一度も事故や違反をしていない人や、長期間安全運転をした人はどうでしょうか?
無事故・無違反の期間が一定以上ある場合には、次のような特例が置かれています。
条件 | 特例の内容 |
無事故・無違反の期間が1年以上である | その期間より前の違反行為の点数を累積しないで点数を計算 |
無事故・無違反の期間が2年以上である場合で、3点以下の軽微な違反行為をした後、3ヶ月以上無事故・無違反である | その軽微な違反行為の点数を累積しないで点数を計算 |
免許停止処分を終了した人が、1年以上無事故・無違反である 免許取消処分を終了し、運転免許を再取得した人が1年以上無事故・無違反である | 「前歴なし」とみなして計算 |
免許取り消し・停止処分に対する不満がある場合
もしも、免許取り消しに対して異議申し立てをしたい場合にはどうしたらいいのでしょうか?
交通違反によって免許取り消し・免許停止の行政処分を受けた場合でも、その内容に不満がある場合の争い方について知っておきましょう。
行政処分の決定までの流れとは
行政処分の内容に不満がある場合、3つのタイミングで争うことができるので、行政処分決定までの流れと併せて確認しましょう。
行政処分は次の流れで行われます。
- 交通違反で検挙されるor交通事故の発生
- 違反や事故に応じて定められた点数が付与
- 免許取り消しや免許停止処分(90日以上)の場合には「意見の聴取」が行われる
- 行政処分の決定
公安委員会の「意見の聴取」で主張することができる
行政処分に不満がある場合、公安委員会によって意見の聴取で不満を主張することができます。
公安委員会が免許取り消し・90日以上の免許停止処分をしようとする場合、処分の前に「意見の聴取」を行う必要があります。
意見の聴取において、運転手は自己に有利な証拠を提出することと、意見を述べることができます。
意見の聴取が行われるときには、意見の聴取通知書が事前に公安員会から送られてくることになっており、ここに開催日とともに処分の理由も記載されています。
これに反論するための証拠を集めて意見をすることで、処分に対する不満を主張することができます。
審査請求を行うことができる
意見の聴取で不満について主張したものの、これが受け入れられずに行政処分が行われた場合、これに対しては審査請求を行うことができます。
審査請求をする場合、審査請求書を都道府県の公安委員会に提出します。
審査請求書が提出されると、公安委員会から処分の内容と理由が記載された弁明書が送られてくるので、これに対して反論書を提出することで、行政処分に対する不満を主張することができます。
手続きが終わると「審理手続終結通知書」が送られてきて、その後に公安委員会による裁決が行われます。
審査請求は、処分を知った日の翌日から3ヶ月以内、もしくは処分があった日の翌日から1年以内に行う必要があるので注意しましょう。
行政訴訟を提起することができる
上記の審査請求は、処分をした都道府県の公安委員会に対して行われるものなのですが、その他に処分の取り消しを求める行政訴訟を起こすことができます。
行政訴訟の中で行政処分を争うことで、行政処分に対する不満を主張することができます。
行政訴訟は、処分もしくは裁決があったことを知った日から6ヶ月以内、または処分もしくは裁決があった日から1年以内に提起しなければならない点に注意しましょう。
免許取り消し処分後の免許再取得の流れ
免許の取り消しをされた場合、もう二度と免許の取得は不可能なのでしょうか?
安心してください。
免許取り消し処分を受けた後に、再度免許を取得することが可能です。
免許を再取得する場合、通常免許を取得するのと同様に自動車教習所に通い、仮免許を取得した後に、取消処分者講習を受ける必要があります。
また、飲酒運転が理由で免許取り消し処分を受けた場合には、飲酒取消講習の受講が必要です。
そして、欠格期間満了後、運転免許の試験に合格することで、免許を再取得することができます。
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まとめ
本記事では、免許停止・免許取り消しなどの行政処分についてお伝えしました。
交通違反・交通事故によって免許停止・免許取り消しという行政処分が行われますが、これらについては不満を主張することができます。
交通違反を行っていないという主張をするためには、事実関係の整理や適切な証拠の提出が欠かせません。
弁護士に依頼すれば、これらを適切に行い、手続きで主張して、行政処分を取り消すために尽力してもらうことが可能です。
ひとりひとりに真摯に向き合い、事件解決に向け取り組んでます。気軽にご相談が聞けて、迅速に対応できる弁護士であり続けたいと考えております。
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