後遺障害の損害賠償を受け取る2つの方法~一時金賠償と定期金賠償の違い

交通事故で被害に遭った場合などの損害賠償は、「現金による一括払い」となるのが一般的です。

しかし、交通事故が原因で働くことができないほどの後遺障害が残ってしまった場合には、日々の生活費などの引き当てとして、損害賠償を月払い(分割払い)で受け取る方法の方がよいという場合も少なくないといえます。

今回は、最近出された最高裁判所の判決にも触れながら、損害賠償を受け取る2つの方法の違いや、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

記事に入る前に・・・

絶対に許せない。弁護士を立てて訴えてやりたい!
だけど費用的に無理・・・という時代は終わりました。
加入者数25,000件突破!弁護士費用お支払い件数12,000件突破! *1
10年連続No.1「弁護士保険ミカタ」*2
  • 離婚・男女トラブル
  • 労働トラブル
  • 近隣トラブル
  • 誹謗中傷トラブル
  • 相続トラブル

私たちの身の回りに潜む身近なこれらのトラブル(一般事件)に遭遇したときの弁護士費用を最大9割補償
※特定偶発事故は最大100%(実費相当額)

トラブルの初期段階で弁護士に電話で、相談料無料で初期相談ができる「弁護士直通ダイヤル」トラブルを未然に防ぐアイテム「弁護士保険証」も大変好評です! *4

気になる方はまずは資料請求から!(ご自宅への送付、メールへの送付が選べます)

\ 累計資料請求80,000件突破 /

目次

交通事故で後遺障害が残った場合の損害賠償

今回とりあげる最高裁判所の判決は、交通事故が原因で重篤な後遺障害が残ってしまった場合の損害賠償請求事件です。

そこで、記事の内容を理解する上で必要な程度で、交通事故が原因で後遺障害が残ってしまった場合の損害賠償の仕組みについて確認しておきたいと思います。

後遺障害とは?

交通事故でケガをしてしまった場合には、加害者が被害者の治療費(およびそれに付随する支出・経済的損害)を補填することで賠償をするのが基本です。

しかし、ケガの内容・程度によっては、医学的な治療では回復することのできない症状が残ってしまう場合があります。

この「治療では治すことのできない具体的な症状」のことを後遺障害と呼び、法律では症状ごとに第1級から第14級までに区分しています。

後遺障害が残ってしまったときの損害賠償

後遺障害は、上でも述べたように治療では治すことができませんので、治療費を加害者が負担する方法とは異なる形で損害賠償をすることになります。

後遺障害慰謝料

後遺障害が残ってしまった被害者は、その後長い間、後遺障害によって不便な生活を強いられることになります。

後遺障害慰謝料は、不便な生活を送らなければならないことによる精神的な苦痛を慰謝する(填補する)目的で支払われる賠償金のことです。

実務の上では、自賠責保険(損害保険算出機構など)によって認定された後遺障害等級(1級~14級)に応じた金額が支払われることになっています。

逸失利益

後遺障害の程度によっては、仕事に制約を生じさせるようなことも考えられます。

たとえば、交通事故が原因で半身不随となってしまったような場合には、その被害者が今後就ける職業は大きな制約を受ける場合が多いでしょう。

逸失利益(いっしつりえき)は、このように後遺障害が原因で減少してしまった将来の収入を填補する目的で支払われる賠償金です。

損害賠償の受け取り方

この記事の冒頭でも述べたように、損害賠償は「一括払い」で受け取るのが実務では一般的となっています(法律用語としては「一時金」といいます)。

しかし、法律は損害賠償を「月払い」で受け取るような方法(定期金による損害賠償)を選択することを否定していません。

たとえば、民事訴訟法117条では、定期金による賠償を命じた確定判決の内容(定期金の額)を事後に見直す訴えを提起できることが規定されています。

とはいえ、実際には、定期金による損害賠償は、損害賠償の支払期間が長くなることから加害者側の負担も過大になることから、将来の介護費用の請求などの限られたケースでしか利用されておらず、どのようなケースまで利用が認められるのかについては十分な議論がなされていない状況にあったといえます。

逸失利益を定期金で受け取ることを認めた最高裁判例

このような中で、今年(2020年)7月に最高裁判所は、事故当時4歳の子どもが大型トラックに轢かれ高度の脳機能障害が残ったために、労働能力を完全に喪失したケースについて、この事故による逸失利益を定期金で受け取ることを認める判決を下しました。

最高裁判所令和2年7月9日判決(裁判所ウェブサイト)

逸失利益を定期金で受け取るための要件

本件最高裁判決は、交通事故の逸失利益を定期金で受け取れる場合の要件として、次の2つの基準を挙げています。

・交通事故の被害者が定期金による賠償を求めている

・加害者に定期金によって逸失利益を支払わせることが損害賠償制度の目的・理念に照らして相当と認められる

被害者が定期金賠償を求めていること

要件の第一は、被害者が定期金による賠償を求めているということです。

損害賠償は被害者のために支払われるべきものですから、被害者が希望していない場合まで定期金によって賠償させることは公平とはいえない場合が多いといえるでしょう。

損害賠償制度の目的・理念

日本における損害賠償制度は、損害を加害者と被害者で「公平に分担する」ことを基本的な目的としています。

したがって、定期金による損害賠償の支払いは、一時金による場合と比べると「加害者の負担」が著しく重くなることに配慮する必要があるといえます。

本件においては、「4歳の子どもが一生働くことのできないほどの重度の後遺障害を負わされてしまった」ことが定期金による賠償を認める大きな要因になっているといえます。

したがって、骨折やむち打ち症といった比較的軽度の後遺障害が問題となる場合には、逸失利益の支払いであっても定期金による方法が認められない可能性は残されているといえます。

後遺障害慰謝料も定期金で受け取ることは可能なのか?

本件の被害者は、逸失利益の支払いのみを定期金で行うことを求めたものですが、後遺障害慰謝料についても、逸失利益と同様の要件の下に、定期金での支払いを認める余地があるといえます。

後遺障害慰謝料・逸失利益の違いによって、賠償方法を区別する理由は特にないといえますし、一般的には後遺障害慰謝料の支払いの方が加害者側の負担も小さくなる(金額が少ない)からです。

一時金賠償と定期金賠償はどちらが得か?

交通事故によって後遺障害が残ってしまった被害者にとっては、一時金による損害賠償の受け取りと、定期金による損害賠償の受け取りでは、「どちらが得なのか」ということが一番気になる点だと思われます。

結論からいえば、どちらの方がよいと明確な結論を出せるものではなく、それぞれのケースにおける諸事情(被害の程度や被害者の今後の生活状況など)に応じて、適していると思われる方法を選択することが大切といえます。

以下、あくまでも一般論としてということになりますが、一時金による損害賠償と比べたときの定期金賠償のメリット・デメリットについて解説していきます。

定期金賠償のメリット

被害者が逸失利益を定期金で受け取ることを選択する最大のメリットは、「受け取れる損害賠償の総額が多くなる可能性が高い」ということです。

定期金による受け取りであれば中間利息を考慮する必要がなくなるからです。

逸失利益は、被害者が働けたであろう年齢(実務上は67歳)までの減収分の総額となるので、それを一時金として67歳になる前に満額を受け取る場合には、67歳までの利息に相当する額をあらかじめ差し引く必要があるわけです。

これを中間利息の控除といいます。

本件のように、未就労の児童が被害者となった場合には、年齢が若いほど中間利息として控除される金額も大きくなり、かなりの金額が中間利息として控除されてしまいますので、定期金による賠償を求めることは被害者にとっても大きなメリットがあるといえます。

定期金賠償のデメリット

定期金賠償の最大のデメリットは、加害者(の保険会社)と長期の関係をもたなければならないことにあります。

たとえば、示談交渉において、「相手方の対応に不快な思いをした」という場合であれば、そのような相手方と何十年も付き合っていかなければならないということは、被害者にとって大きな負担といえます。

また、支払期間が長期間になれば、賠償金の支払者の資力に不安が生じるリスクも抱えることになります。

一般的には、定期金は相手方が加入している保険会社が支払うことになるため、それほどの心配は不要かもしれませんが、「保険会社が絶対に倒産しない」というわけではありません。

就労可能年限(67歳)に到達する前に被害者が死亡した場合はどうなる?

定期金賠償を選択する際には、「被害者が早く死亡してしまったら一時金よりも賠償金が少なくなってしまう」ということを心配する人もいるかもしれません。

「被害者が死亡すれば、加害者が逸失利益を支払う必要もなくなる」と考える余地がないわけではないからです。

しかし、この点について本件最高裁判決は、定期金賠償を選択した場合であっても、「逸失利益の支払いの終期を被害者死亡の時点とすべきではない」という判断を示しています。交通事故後に被害者が死亡するということは、「偶然の要素」に過ぎず、それによって賠償額が左右されるということは、損害の公平な分担を理念・目的とするわが国の損害賠償制度の解釈として相当とはいえないからです。

したがって、通常のケースであれば、被害者が67歳になる前に死亡した場合でも、加害者はその遺族に対して定期金の支払いを続けることになります。

ただし、被害者が交通事故の時点で、別の既往症(たとえば末期がんなど)があり、既に余命が長くないことがあきらかであったというような場合には、被害者死亡の時点を逸失利益支払いの終期とすることに相当の理由があると考えることもできます。

また、本件判決の補足意見が指摘しているように、それぞれのケースの状況によっては、被害者死亡の時点で、今後の定期金の額について見直しをする(加害者側が民事訴訟法117条に基づいて確定判決の変更を求める訴えを提起する)ということも考えられるでしょう。

あなたが泣き寝入りしないために

絶対に許せない。弁護士を立てて訴えてやりたい!
だけど費用的に無理・・・という時代は終わりました。
加入者数25,000件突破!弁護士費用お支払い件数12,000件突破! *1
10年連続No.1「弁護士保険ミカタ」*2
  • 離婚・男女トラブル
  • 労働トラブル
  • 近隣トラブル
  • 誹謗中傷トラブル
  • 相続トラブル

私たちの身の回りに潜む身近なこれらのトラブル(一般事件)に遭遇したときの弁護士費用を最大9割補償※特定偶発事故は最大100%(実費相当額)

トラブルの初期段階で弁護士に電話で、相談料無料で初期相談ができる「弁護士直通ダイヤル」トラブルを未然に防ぐアイテム「弁護士保険証」も大変好評です! *4

気になる方はまずは資料請求から!(ご自宅への送付、メールへの送付が選べます)

\ 累計資料請求80,000件突破 /

*1 件数は2023年3月現在  *2  2013年~2022年。単独型弁護士保険として。2023年3月当社調べ。*3 99プランの場合 *4 初期相談‥事案が法律問題かどうかの判断や一般的な法制度上のアドバイス 募集文書番号 M2022営推00409

まとめ

逸失利益の月払いのような定期金の形式で受け取れる余地が認められたことは、交通事故被害者にとって、「損害回復の選択肢が増えた」という点でとても大きな意義のあることです。

しかしながら、「選択肢が増えた」ことによって、事案の処理がさらに複雑になる可能性がある点には注意する必要があるでしょう。

一時金と定期金のいずれで損害賠償を受け取るべきかは、それぞれのケースが抱える事情を十分に考慮して、慎重に判断する必要があります。

その意味では、後遺障害が疑われる事案では、今まで以上に「弁護士に相談する」ことの重要性が増したということができます。

弁護士保険に加入していれば、本件のような交通事故被害にあった場合に限らず、相続・離婚・詐欺被害といった幅広い法的トラブルにまきこまれた場合にも利用できます。

弁護士
黒田弁護士

弁護士 黒田悦男 

大阪弁護士会所属
弁護士法人 茨木太陽 代表
住所:大阪府茨木市双葉町10-1
電話:0120-932-981

事務所として、大阪府茨木市の他、京都市、堺市にて、交通事故被害者側に特化。後遺障害認定分野については、注力分野とし、医学的研鑽も重ねています。

また法人の顧問をはじめ事業上のトラブルにも対応をしています。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
目次