車は便利な乗り物である一方で、乗り方によっては走る凶器となり重大な結果を招いてしまう危険性もはらんでいます。
この記事では、 交通事故によって伴うリスク等を3つの事実に基づいて丁寧に解説してまいります。
- 交通事故の種類
- 交通事故の実情
- 交通事故の加害者となった場合に問われる責任
記事に入る前に・・・
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交通事故の種類
交通事故の種類は大きく「物損事故」と「人身事故」に分けることができます。
なお、物損事故、人身事故という用語は法律に出てくる法律用語ではなく、両者を区別するため、便宜上使われている用語にすぎません。
物損事故
物損事故とは、車両の運転によって物的損害を発生させた場合の交通事故のことをいいます。
たとえば、Aさんが車を運転していたところ、スマートフォンの操作に気を取られて前方注視が疎かになり、前方で信号停止中のBさん運転の車(B車)に衝突して、B車の後部を凹損させた(Bさんには怪我がなかった)、という場合が物損事故の典型です。
その他、他人の家の外壁、家、ガードレールなど他人の車両以外の物を損壊した場合も物損事故に含まれるでしょう。
物損事故は、以下の関係において、人的損害が発生しなかった場合の交通事故です。
- 車VS車
- 車VSバイク
- 車VS自転車
- 車VS物
人身事故
人身事故とは、車両の運転によって人的損害、あるいは人的損害のほか物的損害を発生させた場合の交通事故のことをいいます。
人的損害には人に怪我、後遺症を負わせることのほか、人を死亡させることも当然含まれます。
先ほどのAさんの追突事故の例でいいますと、Bさんが交通事故後に病院を受診し、医師から加療約1週間の怪我の診断を受けたとします。
そして、Bさんが病院で受け取った診断書を警察に提出した時点で、当初物損事故として取り扱われていた交通事故が人身事故へと切り替わります。
被害者の怪我の状況などから、交通事故直後から人身事故として扱われることも、もちろんあります。
人身事故は、以下の関係において、人的損害、物的損害を発生させた場合の交通事故といえます。
- 車VS車
- 車VSバイク
- 車VS自転車
- 車VS人
交通事故の実情
令和2年の交通事故の実情については最新の統計表が公表されていないためご紹介することができません。
しかし、新型コロナの影響により外出する人が減ったことに伴って、交通事故の件数自体も減っているようです。
また、2020年(令和2年)2月18日に警視庁交通局から公表された「令和元年中の交通事故の発生状況」によりますと、交通事故件数は平成16年の「952,720」件のピークを最後に年々減少傾向にあり、令和元年は「381,237」件とピーク時の1/2以上減少していることが分かります。
なお、過去5年の交通事故件数は以下のとおりです。
【過去5年の交通事故発生件数】
年度 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 |
交通事故件数 | 536,899 | 499,201 | 472,165 | 430,601 | 381,237 |
交通事故が減少した理由としては、交通違反・交通事故に関連する各種罰則の強化、車両運転者・歩行者の交通規範意識の向上、自動車技術の進歩などを挙げることができます。
他方で、交通事故件数自体は減少傾向にある一方、交通事故死者数に占める65歳以上の割合は近年、増加傾向にあります。
特に、令和元年の65歳以上の歩行中の死者数は65歳未満と比較して約2.4倍で、全死者数の約1/4を占めています。
もっとも、こうした傾向は、65歳以上の歩行者の法令違反(横断禁止場所横断など)も影響していることも認められます。
したがって、車を運転中に高齢歩行者を見かけたときは、高齢歩行者の動静に細心の注意を払って運転する必要があります。
また、交通事故の態様別にみると、依然として高い割合を占めているのが、以下の安全運転義務違反による交通事故です。
- 漫然運転(寝不足、疲れなどからくる集中力を欠く中での運転など)
- 脇見運転(運転と関係ない物を見ながらの運転など)
- 動静不注視(思い込み、「~してくれるだろう」運転など)
- 安全不確認(交差点内における車、自転車、歩行者に対する安全不確認など)
車を運転する際は上記のようなことを行うことは厳に慎み、交通ルールを守って安全運転に心がけることが大切です。
交通事故の加害者となった場合に問われる責任
交通事故の加害者となった場合は、以下の4つの責任を負う可能性があります。
- 刑事責任
- 民事責任
- 行政責任
- 社会的責任
刑事責任
刑事責任とは、刑事裁判である犯罪行為を行ったと認定された場合に、裁判所から命ぜられた刑罰(懲役、禁錮、罰金など)に服さなければならない責任のことです。
人身事故を起こした場合は、主に次の罪に問われることが多いです。
過失運転致死傷罪
刑罰は「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」です。
本罪は、「交通事故の種類」でもご紹介したように、自動車を運転中、スマートフォンの操作に気を取られて前方の車に追突したなど、自動車の運転上必要な注意を怠って(過失により)「人身事故」を発生させた場合に問われる可能性のある罪です。
人に怪我を負わせた場合は過失運転致傷罪、人を死亡させた場合は過失運転致死罪が適用されます。
危険運転致死傷罪
刑罰は、危険運転によって以下の通りです。
人を負傷させた場合・・・・15年以下の懲役
人を死亡させた場合・・・・1年以上の有期懲役(上限20年)
危険運転の内容は8つ規定されています。
危険運転の内容は1号~8号に規定されています。
故意に以下のいずれかの罪を犯し、その結果、人を死傷させてしまった場合は、危険運転致死傷罪が適用されます。
1号・・・・・アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
2~4号・・(略)
5号・・・・車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることとなる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
6号・・・・高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行(自動車が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。)をさせる行為
7号・・・・赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
8号・・・・(略)
なお、5号、6号は近年のあおり運転が社会問題化してきたことを受け、令和2年7月2日から施行された改正自動車運転死傷処罰法で新たに設けられた規定です。
又、物損事故が警察に発覚したことをきっかけに、「酒酔い運転や無免許運転等」が発覚するという事をよく耳にすると思います。
それらの罰則は以下の通りです。
物損事故を起こした場合・・・・他人の建造物を損壊した行為につき過失建造物損壊罪(6月以下の禁錮又は10万円以下の罰金)
酒酔い運転の罪・・・・(5年以下の懲役又は100万円以下の罰金)
酒気帯び運転の罪・・・・(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
無免許運転の罪・・・・(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)
民事責任
民事責任とは損害賠償責任のことです。
損害賠償は、物損事故の場合は物的損害*について、人身事故の場合は人的損害*、あるいは物的損害と人的損害の両方について、お金を支払って埋め合わせする必要があります。
*物的損害・・・車の修理代、休車損害 など
*人的損害・・・治療費、休業損害、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料 など
自賠責保険に加入している場合は人的損害についてのみ最大120万円まで補償されます。任意保険に加入している場合は、保険の内容にもよりますが、対人、対物無制限の補償内容としている方が多いと思われます。
なお、自賠責保険に加入していない場合は無保険車運行の罪(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)にも問われてしまうほか、発生したすべての損害について自己負担しなければなりません。
行政責任
行政責任とは、点数制度に基づく免許停止、免許取り消しなどの処分を受ける責任のことです。
点数制度とは、交通違反や交通事故に一定の点数を付与し、過去3年年間の合計点数(累積点数)が一定の基準に達した場合に、免許停止、免許取り消しなどの行政処分を科す制度です。
たとえば、人身事故の場合、以下の通り、被害の程度などに応じて点数(付加点数)が加算されます。
死亡事故・・・13点 or 20点
傷害事故・・・2点~13点
なお、累積点数を含め6点以上に達した場合に免許停止の、35点以上に達した場合に免許取り消しの行政処分が科されます。
したがって、人身事故を起こした場合でも、被害の程度などによっては免許停止(停止期間は点数による)などの行政処分を受ける可能性は十分あるということになります。
刑事責任と行政責任は別個の責任と考えられており、たとえ刑事責任で不起訴となったからといって、行政責任が科されないというわけではないことに注意が必要です。
社会的責任
社会的責任とは、被害者に対するお詫びの連絡やお見舞い、被害弁償、示談交渉において、人として社会人としての良識に基づいた行動を果たすべき責任のことです。
社会的責任は上の3つの責任と異なり、法律で要求された責任ではありません。
しかし、ある意味、この社会的責任が交通事故の中で最も重要な責任といっても過言ではありません。
すなわち、被害者に対するお詫びやお見舞いなどの初期対応を誤ると、被害者の処罰感情が悪化して刑事責任が重くなる、相場以上の損賠賠償金を請求されるなどの事態へと発展しかねないのです。
よくある例として、始めから保険会社に被害者への対応を一任してしまうことです。
確かに、保険料を支払っているため保険会社へ全てを任せるのは加害者の権利、というお気持ちは理解できます。
しかし、保険会社は加害者に代わって示談交渉を代行するだけであって、被害者に対する謝罪を代行するわけではありません。
したがって、始めから保険会社ありきの対応ではなく、あくまで交通事故を起こしたのは自分だというスタンスで、被害者に対して誠心誠意対応することが大切です。
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まとめ
交通事故には物損事故と人身事故があります。
近年は物損事故、人身事故とも減少傾向にありますが、65歳以上の高齢者の死亡事故は増加傾向にあります。
交通事故を起こせば、刑事責任、民事責任、行政責任、社会的責任を負う必要が出てきます。
車を運転する際は、交通ルールを守ることはもちろんのこと、高齢者の動静にも特に注意を払う必要があります。
あらかじめ弁護士保険や各種の損害保険などに加入して、訴訟リスクに備えておくことをおすすめします。
弁護士 黒田悦男
大阪弁護士会所属
弁護士法人 茨木太陽 代表
住所:大阪府茨木市双葉町10-1
電話:0120-932-981
事務所として、大阪府茨木市の他、京都市、堺市にて、交通事故被害者側に特化。後遺障害認定分野については、注力分野とし、医学的研鑽も重ねています。
また法人の顧問をはじめ事業上のトラブルにも対応をしています。
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